キヤノングループの日本国内キヤノンブランドならびに関連ソリューションのマーケティングを担当する企業、キヤノンマーケティングジャパン(CMJ)社が、新卒採用を停止することを発表しました。
http://news.livedoor.com/article/detail/4536909/
キヤノンマーケティングジャパン(CMJ)の新卒採用停止は、きわめて画期的な経営判断であり、かねてから大学教官として、「就活早期化」に反対を唱えて来た思いが報いられた気がしています。さすが経団連企業!正に英断と言えるでしょう。文科省は顕彰してこの決断に報いるべきです。
これは倫理的、教育的なメリットだけでなく、人事・経営という視点からもきわめて正しい、優れた判断であると言えます。
未曾有の不況に苦しむ経営環境下、新卒内定切りが話題となりました。私も、内定切りを一度でもした企業は未来永劫コーポレートブランドを損ねるというコラムを書きました。実際不透明な環境下、内定切りせざるを得ない環境は、もはや企業として末期であり、BCM(事業継続)という視点からは正しい判断かも知れなくとも、人事政策、企業ロイヤリティ、何よりコーポレートブランディングという視点からは、「終わってる」ことを内外に公知することを意味するからです。
しかし、景気対応しつつ、内定切りをしないで済む妙手があったのです。それが「新卒採用を遅らせる」ことです。
実はこの手法は「空前の採用『難』」を迎えていた数年前に、新卒採用に苦しむ企業、主に中小企業ですが、向けに提案し、実績を上げたものでした。私は「戦略的採用」を提唱する立場から、採用・人材獲得においても、中小・零細企業が、大手と同じ戦略を取るのはあり得ないと述べて参りました。現実を受入れ、その中で最善を目指すアプローチが「タイミング」をずらすことでした。
結果として、社員数十名の企業が毎年新卒採用に成功できた等、一定の成果が出せたのです。
しかも、この手法は景気が急速に悪化していった一昨年末あたりでもワーク出来たのです。
景気が悪化したことで大手は一斉に採用を絞り、結果として今日の「超氷河期」が来た訳です。しかし一方で人材採用がゼロになった訳ではありません。営業でも技術でも、継続的に人材を確保し、育成しなければ事業が維持運営出来ない企業はたくさんあります。特にいわゆる超有名企業ではない場合、社名そのものが全く知られていないがゆえに、優良企業でも人材獲得には苦戦しているのが実態です。
就職活動早期化は企業にも学生にも重大な弊害をもたらしました。特に私のいる大学・大学院は理工系のため、学部3年はもとより、修士1年が就職活動をする=学部3年10月、修士1年10月という、全く専門性を発揮できない中途半端な時期に就活を煽られるという不幸が蔓延しています。結果、採用した企業も「こんなはずではなかった」というミスマッチが増えることはあっても、得るものは何もなかったのが最近の新卒就職・採用活動でした。
優秀な理系大学の大学院には幸い、推薦依頼が多数寄せられます。このおかげで真に優秀な学生は、研究室経由でしっかりと研究活動をし、企業も安心して採用が確定出来ると言うメリットが、これまで以上に発揮されることとなりました。しかしこうした手法は一部の有名大学院に限られ、多くの大学生たち、特に文系では、正に苦闘を強いられています。
今回キヤノンMJが発表した;
「2010年1月から3月の業績を見た上で、新卒採用をするかどうか判断する。採用活動を行うのであれば、4月以後にきちんと伝えよう。選考活動は、いっそ夏季休暇期間中にすれば良い」
という声明は、正に卓見です。世界のキヤノン、経団連企業であっても先行きは不透明、このような冷徹な事実をしっかりと受け止める姿勢は、正に戦略的です。
神頼みで特攻精神があれば、竹槍でB29も迎撃できると信じる姿勢の逆であり、キヤノングループは、しっかりと現在の不況に正面から取り組んで対応している信頼を感じることが出来ます。
恐らく「3月までの業績を見据え」たとしても新卒採用は行われることでしょう。
何よりキヤノンの得られるメリットは、「新卒内定切り」等の思い企業リスクを背負うこと無く、また「ベストタイミングで就活出来る、最高に選りすぐった最上級の新卒」と思われる人材確保は難しいかも知れないが、十分ポテンシャルを持つ、優秀な人材獲得のチャンスをほぼ独占出来ることです。
人材確保で「ベスト」等ありません。この「ベター」戦略は極めて理にかなっています。
先述した私の関係した中小企業の例ですが、新卒採用のタイミングを秋や春ではなく、基本は通年としました。そして毎月1回説明会を設け、定例化した会社説明と職場見学を行い、一定の選考を経た者は遂次体験勤務等の次ステップに進め、採用に至っています。
新卒採用は超大手と同じタイミングで行っていませんか?良い人採れていますか?「良い人が取れない」企業さんは、採用戦略そのものを再検討する絶好の機会です。
また文部科学省はキヤノンマーケティングの快挙に対し、感謝状で顕彰すべきと考えます。