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ITmedia ビジネスオンライン 掲載「熊田曜子親子拒否事件に見るサービスのあり方。正しい点と間違った点」

ITmedia ビジネスオンラインに掲載されました。

「熊田曜子親子拒否事件に見るサービスのあり方。正しい点と間違った点」(増沢隆太)

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1811/08/news092.html

 

3人の子持ちである熊田曜子さんが、墨田区の児童館の中の施設に入ろうとしたところ、「親一人に子は二人まで」という規制で入れない事件がありました。融通の利かない施設への批判が出ていますが、制度運営側とユーザー側の折り合う点はあるでしょうか?

 

1.事件発生
3人のお子さんを連れ、墨田区東向島児童館分館という児童館に行った熊田曜子さん。しかし施設の中にある、できたばかりの「すくすくルーム」という設備は、13組の親子(子供は5歳まで)が1時間で入替え制というもののようでした。様々な遊具を利用できるためにも入替えは必要なようで、何かトラブルがあれば大騒ぎになって安全管理責任にうるさい昨今、これ自体著しく理不尽なものとは思えません。

 

一方、少子化の中、3人も子を持つ親が利用できないとは何事だ!という墨田区への批判は盛り上がっているようです。本件は当事者の熊田さん自身が事前の注意不足であることを認めていますが、ネットニュースになったことで墨田区側への批判はまだ収まっていません。

確かに2人はOKで3人はダメというのも融通が利かない気がしますし、少子化時代にたくさん子供がいる親を優遇すべきではないかという意見はもっともです。しかしサービス提供者とユーザーの関係性から見るなら、ここには提供者から一線が引かれなければなりません。

 

2.ホテルコンシェルジェと立食いそば屋のおばちゃんのサービスは同じ
映画などでの高級ホテルのシーンでは、ロビーのゴージャスなソファでホテルのコンシェルジェが丁寧に大富豪に対応している光景を見たことがあります。一方私が泊まる時はせせこましくフロントでインターネット予約番号をスマホで探したり、ポイントカードを財布からあわてて探したりですが、きっとコンシェルジェがいればさまざまなサービスを提供してくれるのでしょう。ぜひ「この手紙を〇〇さんに届けて。バラを添えて」のようなサービスも頼んでみたいものです。

 

実際にコンシェルジェを使ったことがないので、どこまでのサービスに応じてくれるのか知りませんが、大金を使ってくれる大金持ちには徹底したゴージャスなサービスを提供するのは、ハイペイ・ハイサービスの典型です。一方、ポイント貯めて割引料金で泊まろうとする私には料金分最低限でのサービスをということで、これぞサービスの基本です。コンシェルジェの真裏に位置する、立食いそば屋も正しいサービス提供だといえます。安い売価での商品提供に沿った、価格相応のサービスを提供しているからです。立食いそば屋で、そばのゆで方や蕎麦湯の温度に文句を言う方が悪いのです。

 

つまりハイペイ・ハイサーピスも、逆のローペイ・ローサービスも、どちらも経済の原則として正しいものです。

 

しかしよくある「ローペイ・ハイサービス」というのは、立食いそば屋にホテルサービスを求めるのと同じ、モンスター行為です。売価に見合わないサービス提供をうたうことこそ、やりがい搾取やモンスタークレーマーを育てることになります。それは価格設定が間違っているのであり、高いフィーを取らずに高いサービスを提供することが間違いであるという当然のことを、特に日本社会では強く経営者が実践しないことでブラック企業が生まれるといえるでしょう。

 

3.サービス提供の原理原則
熊田さんの事件で、「一人くらい多めに見るべき」「困った母親がかわいそう」という意見は、「区役所の窓口が5時ピッタリに閉まるのは怠慢」と同類の批判でしょう。実際熊田さん一人を大目に見たからただちに事故があると決まった訳ではありませんし、区役所窓口に至っては、まだまだ職員の方がいる訳で、難しい処理ではなく単に書類提出に支障があるとは思えません。

 

しかしこうした人情は、サービス提供においては明確に切り捨てなければなりません。なぜなら区役所のような公的サービスは、「全体の奉仕者」であり、一部のための奉仕者ではないからです。5時1分に窓口に来た人の書類を受け付けている最中、5時6分に次の人が来たらどうするのでしょうか?その人も受付けている中、さらに5時11分になったら?

 

区役所の入り口を、5時ジャストに閉鎖し、その後入ることができないようにする銀行方式は一つのアイデアです。この方式を採れば、例外扱いを無制限に行うことはなく、最大でも処理すべき人数は決まります。役所でも警備員さんなどを導入し;
〇点でそこにいる人まで受け入れる
⊇萢スピードを判断して、5時前から新規受付終了時間を設定する
といった対策を取ることで、対応はできるようになるでしょう。

 

児童館のすくすくルームは親と子供の比率制限を設定した段階で、こうした事象が起こることは当然予期しなければならないのです。その準備が、結果として単に「利用方法に書いてあっただけ」だったことが騒動となりました。

区役所の方針は全く間違っていません。しかしサービス提供の現実を無視してしまったことは、準備不足として経営者が責めを負うべき問題です、この場合の経営者が区長なのか施設長なのかはわかりませんが。

 

万が一の事故への対応を考えれば、保護者1人子供2人には合理性があります。問題はここではなく、それをどう知らしめたか、また実際の対応をどこまで考えられたかです。Webサイトはもちろん、児童館入り口でも、こうしたトラブルを呼ぶことが明らかなものであれば、朱書きした看板を立てたり、入り口に何重にも注意書きを貼ったりと、広報対策を取るべきでした。

もちろんすべてもことでこうした注意書きが出せないのは当然ですが、新規オープンで人気もあり注目を浴びるようなものと、ほとんど利用者もないようなものは当然現場なら区別できるでしょう。100%の対応などできる必要もなく、限りなく問題発生を極少化できる対策を打っておくのが、本来あるべき公共サービスだと思います。「少子化に逆行する!」というクレームは、区長やこの施設を作った人、政治家にいうべきことで、少なくとも窓口担当者ではありません。

 

最後に、この墨田区東向島児童館分館のある向島で育った私。コンプライアンスなどと呼ばれるものが存在しなかった時代の下町では、他人の子供を叱るどころかぶん殴るオヤジがおり、児童館そばに昔あったマンモス公園では同級生のキヨヤス君が大すべり台から勝手にジャンプして転び、顔面から着地して大流血したけど何もなかったこととして、その後も遊び続けた時代でした。

 

JUGEMテーマ:ビジネス

author:RMロンドンパートナーズ, category:記事, 09:14
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